忙しくてもできる。体と脳を整えるセルフメンテナンス入門

本記事では、健康維持や日々のセルフケアに役立つ一般的な情報や生活習慣のヒントをご紹介しています。
効果・効能を保証するものではなく、感じ方には個人差があります。ご自身の体調や症状に不安がある場合は、医師や専門家にご相談ください。
パフォーマンス低下のサインは“慢性疲労”から始まる
「なんとなく疲れが抜けない」「ちょっとダルいことが多い」と感じたとき、体はすでにSOSを出しているかもしれません。慢性疲労が進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
- 不眠(寝つきが悪い、途中で目が覚める)
- 抑うつ症状(やる気が出ない、元気がない)
- 頭痛や頭が重い感覚
- 胃の痛みや吐き気などの消化器系トラブル
- 生理不順やホルモンバランスの乱れ
特に、働き盛りの年代は無理を「普通」と感じてしまいやすく、気づいたときには深刻な体調不良へとつながっていることもあります。日々の“ちょっとした不調”を見逃さず、自分の状態を観察することが第一歩です。
“ちゃんと眠る”ことが最強の生産性アップ術
多忙な生活の中でも、睡眠は最優先にすべき“脳のメンテナンスタイム”です。理想的な睡眠時間は7時間半(90分の倍数)とされていますが、睡眠の質が高ければ5〜6時間でも十分回復できる人もいます。
質の良い睡眠とは以下のような状態です:
- 寝つきがよい
- 夜中に何度も目が覚めない
- 朝早く目が覚めすぎない
- 起床時に疲れがとれている感覚がある
- 日中の眠気が少ない
ポイントは“寝る前の2時間”。この時間にスマホやPCの使用を避け、照明を落とし、心を落ち着ける時間を確保することが重要です。ハーブティーやアロマなどでリラックス環境を整えるのも効果的です。
座りっぱなしが命を縮める?
シドニー大学の調査によると、日本人の平日の平均座位時間は約7時間と、世界でも最も長いとされています。さらに欧米の研究では、1日に11時間以上座っている人は、4時間未満の人と比べて死亡リスクが40%も高まるというデータもあります。
理由のひとつは、長時間体を動かさないことで血流が悪化し、血管の柔軟性が失われること。これにより、心疾患や脳血管障害のリスクが高まると考えられています。
また、下半身には全身の6割の筋肉が集中しており、座り続けることでこれらの筋肉が使われず、糖や脂質の代謝が低下。結果として、生活習慣病のリスクが高まります。
理想的には30分に1回は立ち上がって、軽い屈伸やストレッチを取り入れること。トイレや洗面所に行くなど、どんな動きでもOKです。小さな習慣が大きな差を生みます。
筋肉こそ最強のヘルスハック
筋肉はエネルギーを消費するだけでなく、糖を蓄えて燃やす“代謝の要”です。食事で摂取した糖は、筋肉にグリコーゲンとして蓄えられ、運動によって効率的に使われます。
しかし、筋肉量が減るとこのプロセスが滞り、血糖値が上昇しやすくなり、肥満や糖尿病のリスクが高まります。さらに、筋肉を動かさないと血流が悪くなり、血管の柔軟性が低下。高血圧や動脈硬化の原因にもなります。
大切なのは“無理なく続けること”。徒歩や自転車通勤、エスカレーターを避けて階段を使う、駅まで歩くときに3分ごとに普通歩きと早歩きを交互に行うなど、日常の中に筋トレ要素を取り入れてみましょう。運動イベントに参加するのもモチベーション維持に効果的です。
さらに、夜に軽く汗ばむ程度の運動を取り入れることで、睡眠の質も高まります。人間の体は、体温が高くなると覚醒し、下がると眠気が促される仕組みを持っています。寝る2時間ほど前に運動して体温を上げておくと、その後の自然な体温低下によってスムーズに眠りに入ることができるのです。
健康は“戦略的な自己投資”
高いパフォーマンスを持続させたいなら、健康は「コスト」ではなく「戦略的投資」と捉えるべきです。睡眠、運動、ストレスマネジメントは、すべて未来の自分へのリターンを生み出す“資産形成”の一部です。
さらに、自然とふれあう時間や、呼吸を意識するマインドフルな習慣も、自己回復力を高める大切な手段になります。
テクノロジーに囲まれた生活の中で、あえて「整える」時間を持つ。それが、長く健やかに、そしてクリエイティブに働き続けるための鍵です。
参考・出典
- 厚生労働省:過労死等防止対策白書
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/karoushihoukokusho.html - Sleep Foundation:How Much Sleep Do We Really Need?
https://www.sleepfoundation.org/how-sleep-works/how-much-sleep-do-we-really-need - Owen N, et al. (2010). Too much sitting: The population-health science of sedentary behavior. Exercise and Sport Sciences Reviews.
https://doi.org/10.1097/JES.0b013e3181e373a2 - 日本糖尿病学会:「運動療法と糖尿病」
https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=14 - 浅野 嘉久 (著), 加賀 博 (著)『ビジネスパーソンのための未病&ストレス対策』, 公益財団法人日本生産性本部 労働情報センター, 2019年
- 富田 崇由 (著)『コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場』, 幻冬舎, 2022年
- 茅嶋 康太郎 (著)『過労死にならないためにできること 会社や仕事につぶされない働き方・休み方』, すばる舎, 2018年
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