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スマホ脳と現代人:脳が疲れる時代のリスクと対策

スマホは便利なツールである一方、脳に大きな負荷を与える存在でもあります。近年では「スマホ脳」という言葉も広まり、集中力の低下、睡眠障害、依存、記憶力の衰えといった問題が注目されています。ここでは、スマホが脳に与える影響と、負担を軽減するための習慣を紹介します。


🧠 スマホが脳に与える主な影響

スマホ依存のしくみ

疲れた脳は、手軽な快感を求めがちです。SNSの通知や短い動画の視聴などは脳内の「報酬系」を刺激し、短期的な満足感をもたらします。これが繰り返されると、やめたいのにやめられない「依存状態」になりやすくなります。スマホは“現代のプチ麻薬”とも呼ばれるほど、多くの人の生活に影響を与えています。


寝不足を引き起こすスマホの光

スマホの使用は睡眠にも大きな影響を与えます。夜間にスマホを使うと、画面のブルーライトが目に入り、「メラトニン」という眠りを促すホルモンの分泌が抑制されます。メラトニンのリズムが崩れることで、睡眠の質や入眠が妨げられ、慢性的な寝不足を引き起こします。
さらに、ブルーライトはメラトニンの分泌を抑えるだけでなく、交感神経を刺激し、脳を“覚醒モード”にしてしまうこともわかっています。これにより、寝る前にスマホを使うほど、脳が目覚めてしまい、眠りにつきにくくなります。


セロトニン不足と「スマホうつ」

スマホの使いすぎは、日光を浴びる時間や運動する時間を奪い、セロトニンの分泌量を減少させます。セロトニンは心を落ち着ける働きをする神経伝達物質で、不足すると気分が落ち込みやすくなります。
さらにSNSで他人と自分を比較して自己肯定感が下がったり、ブルーライトで睡眠が妨げられたりすることが重なると、心のバランスを崩しやすくなります。
こうした積み重ねが「スマホうつ」と呼ばれる状態を引き起こすとされ、脳の過労によるセロトニンの枯渇が、うつ病のリスクを高める要因になると考えられています。


記憶力を低下させる「デジタル健忘症」

「はじめて会った人の名前」などを一時的に覚える“短期記憶”は、くり返し思い出すことで“長期記憶”へと定着します。しかし、スマホに頼りきりになるとこのプロセスが省略され、情報をすぐ忘れてしまう「デジタル健忘症」や「スマホ認知症」のような状態になるのではないかと指摘されています。これらの言葉は医学的に定義された病名ではありませんが、記憶力や集中力の低下をわかりやすく表現したものです。カナダの研究では、デジタル機器の使いすぎが記憶を司る脳の活動を抑制し、認知機能の低下を招く可能性があると報告されています。
一方で、スマホによる記憶力の低下を直接的に裏付けるデータは不十分で、「記録によって記憶を効率化できる」とする研究結果もあります。いずれにせよ、スマホと脳機能の関係については、今後の研究結果を注視する必要があるでしょう。


📵 スマホ依存を防ぐ3つの習慣

1. スマホレコーディングダイエット

まずは「自分が1日に何分スマホを使っているか」を記録することから始めましょう。特に、手書きで記録することには効果があります。紙に書き出すことでスマホとの距離を置きやすくなり、客観的に使用状況を見つめ直すことができます。可視化することで、無意識の使用に気づきやすくなります。

2. モノクロ画面に設定

カラフルなアプリや写真は脳を刺激します。スマホの設定をモノクロにするだけで魅力が減り、使用頻度が自然に減っていきます。

3. 通知をオフに&スマホを見えない場所へ

通知音やバイブレーションは、集中力の大敵。オフにして視界から遠ざけることで、“つい見てしまう”状況を回避できます。
アメリカのテキサス大学で行われた興味深い研究があります。500人以上の大学生を対象に行われた実験で、「スマホの机の上に置いた場合」「かばんかポケットに入れた場合」「別の部屋に置く」という3つのグループに分けて記憶力や集中力をはかるテストを実施。実験の結果、スマホを机の上に置いた被験者の成績が最も低く、別の部屋に置いた被験者が最も高くなったという実験があります。被験者は実験後のアンケートで「課題に取り組んでいる際にスマホのことを考えていましたか?」という問いに対して全員が「いいえ」と答えたそうです。このことから、スマホが近くにあると無意識のうちに気を取られてしまい、物事への認知機能が阻害されるのではないかと考えられます。


🌿 脳疲労をリセットする3つの方法

1. 意識的に「ぼんやりする」時間をつくる

なにもしない時間は、脳の省エネモード。思考や感情が整理され、記憶力が高まるだけでなく、ひらめきや創造性の向上にもつながります。

2. マルチタスクを減らす

同時にいくつもの作業をすることは、脳に大きな負荷をかけます。優先順位を決めて一つずつ取り組むことが、脳を疲れさせない秘訣です。

3. 自然に触れる

緑の風景、風の音、水のせせらぎ──こうした自然の刺激はセロトニンの分泌を促し、脳の疲労回復をサポートしてくれます。


おわりに

スマホは日常生活を支える便利なツールですが、過度に頼りすぎると脳にさまざまな悪影響を与える可能性があります。
少しの意識と習慣の工夫で、脳の疲れをやわらげ、心身のバランスを取り戻すことができます。今一度、スマホとのつきあい方を見直してみませんか?


📌 本記事は脳科学や心理学に基づく一般的な知見をもとに構成されており、医療的助言を目的としたものではありません。体調やメンタルの不調を感じた際は、医療機関にご相談ください。

参考文献:

  • ニュートンプレス『超絵解本 ヒトの脳はこんなにすごい! スマホ脳と運動脳』、2023年
  • 奥村 歩 (著)『スマホ脳の処方箋』、2022年

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MIKI

MIKI

「癒しの背景に、植物科学のロジックとやさしさを。」知性と感性で綴るハーバルライター

元々はIT業界で10年以上のキャリアを持つ、異色のハーバルライター。 多忙な日々の中で心身のバランスを崩したことをきっかけに、「食」や「植物」、「人の自然治癒力」に深く関心を抱くように。 その後、メディカルハーブを学び、ハーバルセラピストの資格を取得。現在は、有機野菜の栽培やハーブ農園の立ち上げにも挑戦しながら、メディカルハーブの魅力を発信するライターとして活動中。

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