タンポポは“草”じゃない。世界が認める薬草の実力

道ばたに咲く黄色い花、タンポポ。
その素朴な姿からは想像できないほど、ダンディライオン(タンポポ)は世界各地で重宝されてきた“自然の恵み”のひとつです。
とくに注目したいのが、その「根」の部分。古くから伝統医学で活用されてきたダンディライオンの根は、現代の暮らしに寄り添うハーブとして、静かに支持を集めています。
世界各地で受け継がれてきた、ダンディライオンの知恵
ダンディライオンは繁殖力が強く、世界中のさまざまな地域に広がっています。その歴史は長く、インドのアーユルヴェーダや中東のユナニ医学では、肝臓や胆のうの不調、リウマチなどの体質改善に用いられてきました。
また、北米の先住民・イロコイ族は、腎臓病や水腫、皮膚疾患などにこの植物を活用していたと伝えられています。
日本でも古くから、タンポポの根は生薬として親しまれてきました。苦味によって胃の働きを助け、胆汁の流れを促し、お通じを整えるほか、催乳目的で用いられることも。
※こうした利用は、明治以前に自生していた**在来種の日本タンポポ(Taraxacum japonicumなど)**を中心に行われていたと考えられています。
“根”に秘められた、やさしい力
ダンディライオンの根は、体にやさしく寄り添う成分を多く含んでいます。とくに注目されているのが、以下のような働きです。
● イヌリン(食物繊維)
水溶性のプレバイオティクス成分で、腸内の善玉菌をサポートし、腸内環境を整える働きがあります。便通改善や免疫バランスの調整を目指す方にうれしい成分です。
● 苦味成分(タラクサシン、タラクサセリン)
この苦味が、消化を促したり、肝機能や胆汁分泌をサポートするとされてきました。食後のケアやリフレッシュに活用されることもあります。
● 香ばしく飲みやすいノンカフェイン飲料に
ダンディライオンの根をローストして淹れた「タンポポコーヒー」は、コーヒーのような香ばしさとほんのりビターな風味が特徴。ノンカフェインなので、時間を選ばずに楽しめるのも魅力です。
名前の由来と、タンポポの種類について
「ダンディライオン(dandelion)」という名前は、フランス語の“dent de lion(ライオンの歯)”が語源。ギザギザした葉の形がライオンの歯を思わせることに由来しています。
日本には古来より「日本タンポポ」があり、明治以降には「西洋タンポポ」も広く分布するようになりました。外見は似ていますが、花の下にある“総苞片”の開き方などに違いがあります。
暮らしに取り入れたい、自然の知恵
派手さはなくとも、地にしっかりと根を張り、静かに健やかさを支えてくれるダンディライオンの根。
現代では、ティーとして手軽に取り入れられる形で親しまれ、日々のセルフケアやリラックスタイムに取り入れられています。
「整える」という、ちいさな選択。
その積み重ねが、ゆるやかに体と心をととのえてくれるかもしれません。
参考文献:
- 木村正典(監修)、林真一郎(編)『メディカルハーブの事典:主要100種の基本データ』東京堂出版、2014年
- 永岡治(著)『クレオパトラも愛したハーブの物語 魅惑の香草と人間の5000年』, PHP研究所, 1988年
※本記事はハーブの伝統的な使われ方や植物成分に関する一般的な情報をご紹介するものであり、特定の疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。
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