スーッとするだけじゃない!ペパーミントの本当の実力 – 眠気覚ましから消化促進まで

多種多様なミント
皆さんは「ミント」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?「スーッとする」「歯磨き粉に使われている」など、清涼感のある香りを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実はミントは、世界に40種以上も存在するといわれています。本記事では、そんな多種多様なミントの中でもとくに有名な「ペパーミント」について幅広くご紹介します。
ペパーミントの基本情報
ペパーミントはその爽やかな香りと清涼感のある風味が特徴のハーブです。スペアミントとウォーターミントの自然交配で生まれた交雑種で、ミントの代表的な品種の一つです。ヨーロッパに自生し、一般に温暖で湿った場所を好みます。現在では世界各地で栽培され、草丈は50~80cm程度に生長します。
植物名: ペパーミント
学名: Mentha piperita
和名: 西洋ハッカ(薄荷)
科名: シソ科
使用部位: 葉
含有成分
- 精油0.5〜4%(ℓ-メントール30〜55%、メントン、メントフラン)
- フラボノイド(アピゲニン、ルテオリン)
- シソ科タンニン3.5%〜4.5%
- フェノール酸7%まで(カフェ酸、クロロゲン酸、ロスマリン酸)
主な作用
- 賦活(のち鎮静):活力を与えること。その後、神経の高ぶりを抑え、リラックスさせてくれます。
- 鎮痙:筋肉の緊張を和らげる作用のこと。平滑筋(胃や腸、子宮など)の緊張を緩めます。
- 駆風:胃や腸内にたまったガスを排出して、腹部の張りや痛みを和らげます。
- 利胆:肝臓の胆汁分泌を促すとともに、胆のうから十二指腸への胆汁の排出を促します。
ペパーミントは賦活(活力を与えること)後、鎮静させてくれる珍しいハーブです。中枢神経を刺激して眠気を吹き飛ばし、脳の働きを活性化します。また、食べ過ぎや飲み過ぎ、食欲不振などにも用いられます。
適用症状
- 眠気・集中力欠如などの精神神経症状
- 腹部膨満感
- 鼓腸
- 食欲不振
- 過敏性腸症候群
ペパーミントの歴史
ペパーミントの歴史は非常に古く、ミントは古くから食用だけでなく、薬用、香料としても使われてきました。歴史はメソポタミア文明までさかのぼることができ、粘土板の楔形文字にはハーブが書かれていて、その中にミントもありました。
ヨーロッパでは、17世紀の末にイギリスで本種が認められたのが始まりとされています。イギリスの医師トビアス・ベンナーは、1620年に「ミントの香りは脳と精神を大いに慰め、五感、特に記憶を刺激し、心を元気にする」と書いています。
医薬分野では、ペパーミントは、1721年にロンドン薬局方に登場し、ただれ、性病、風邪、頭痛など、あらゆる種類の病気の治療薬として扱われました。また、日本では第7改正日本薬局方(1962年)には健胃、駆風剤として収載され、常用量1回3g、1日10gと記載されています。
商業栽培については、栽培は、1750年ごろからイギリスのサリー州のミッチャム付近で始められ、この地域が長く栽培の中心地でした。ペパーミントの人気が高まるにつれ、栽培面積はわずか数エーカーから数百エーカーにまで拡大しました。
ペパーミントの現代での利用
現代のペパーミントは、その多様な用途で私たちの生活に深く浸透しています。スパイスとして料理や飲み物に使われるだけでなく、アロマや医薬品、スキンケアなどさまざまな用途で活用されています。
ガムやお菓子、肉や魚の臭み消し、料理の香りづけ、ハーブティー、歯磨き粉、化粧品などに用いられます。また、同名の青緑色をした酒はリキュールの一種でペパーミント油をアルコール液に溶かし、砂糖および各種の芳香油エッセンスなどを基礎とし、オリーブ緑、マラキット緑などの色素で着色します。
スペアミントとの違い
ペパーミントとよく混同されるのがスペアミントですが、重要な違いがあります。スペアミントの精油成分はℓ-カルボンが主であり、ℓ-メントールは含まれません。したがって健胃、駆風の目的ではペパーミントの代用として使用可能ですが、利胆や精神神経症状に代用することはできません。この違いは、使用目的によって使い分けが必要であることを意味しています。
栽培について
ペパーミントは古来から薬草や薬味として使用され、花を蒸留して精油を抽出し、香料として使うなどして愛用されてきた植物です。現代でも家庭園芸として人気があり、比較的育てやすいハーブとして知られています。
ニホンハッカに比べると、メントール含有量は50~60%と低めですが、それでも強いメントールの香りを楽しむことができます。
まとめ
ペパーミントは、古代メソポタミア文明から現代まで、長い間人々に愛され続けてきたハーブです。その清涼感のある香りと多様な薬理作用により、食用、薬用、香料として幅広く利用されています。現代でも医薬品、食品、化粧品など様々な分野で活用されており、私たちの生活に欠かせない存在となっています。
40種以上存在するミントの中でも、ペパーミントはその独特の香りと優れた効能により、まさに「ミントの王様」と呼ぶにふさわしいハーブといえるでしょう。
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