カモミールは睡眠に役立つ?臨床研究から科学的根拠を検証
「眠る前にはカモミールティーがよい」。そんな話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。カモミールは、ヨーロッパで古くから親しまれてきたハーブです。りんごを思わせる甘い香りが特徴で、特に就寝前のハーブティーとして知られています。
しかし、カモミールを飲むことで、本当に睡眠の質が向上するのでしょうか。また、寝つきがよくなることと、夜中に目が覚めにくくなること、睡眠時間が長くなることは、科学的には同じ意味なのでしょうか。
近年は、カモミールと睡眠の関係を調べた臨床研究が蓄積され、2024年には10件の研究、計772人を対象とした系統的レビューとメタ分析が発表されました。その結果、睡眠の質に一定の改善が認められた一方、睡眠時間や睡眠効率については明確な改善が確認されませんでした。
この記事では、カモミールが睡眠に与える影響について、個別の臨床試験、系統的レビュー、米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)などの公的資料をもとに、科学的根拠を検証します。
カモミールはなぜ「眠りのハーブ」と呼ばれるのか?
カモミールには、ジャーマンカモミールとローマンカモミールなど、異なる植物があります。睡眠に関する臨床研究で主に取り上げられているのは、ジャーマンカモミール(Matricaria chamomilla L.、異名 Matricaria recutita L.)です。ジャーマンカモミールはキク科の一年草で、白い花びらと黄色い中心部を持つ花を咲かせます。ハーブティーには、主に乾燥した頭花が利用されます。
カモミールは古くから、気持ちを落ち着かせたいときや、眠りにつく前の時間に利用されてきました。しかし、伝統的に利用されてきたことと、現代の臨床試験で睡眠への効果が証明されていることは別です。
欧州医薬品庁(EMA)が公表するジャーマンカモミールのハーブモノグラフでは、軽度の胃腸の不調や風邪の症状、皮膚・粘膜の軽い炎症などへの伝統的な利用が評価されています。一方、**睡眠障害や不眠症は、同モノグラフで認められた伝統的使用の適応には含まれていません。**では、睡眠に関する臨床研究では、どのような結果が得られているのでしょうか。
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睡眠研究では何を評価している?
カモミールの臨床研究を理解するには、まず「睡眠の質」という言葉の意味を整理する必要があります。私たちは日常的に「よく眠れた」「眠りが浅かった」と表現しますが、医学研究では睡眠をさまざまな指標に分けて評価します。
| 評価項目 | 主に調べる内容 |
|---|---|
| 主観的な睡眠の質 | 本人がどの程度よく眠れたと感じているか |
| 入眠潜時 | 寝床に入ってから眠りにつくまでの時間 |
| 夜間の覚醒 | 眠っている途中に目が覚める回数や、眠りを維持できるか |
| 睡眠時間 | 実際に眠っていた時間 |
| 睡眠効率 | 寝床にいた時間のうち、眠っていた時間の割合 |
| 日中の機能 | 日中の眠気や疲労、生活への影響 |
例えば、寝つきがよくなったとしても、夜中に何度も目が覚めることはあります。反対に、睡眠時間が変わらなくても、本人が「よく眠れた」と感じることもあります。そのため、カモミールの効果を評価する際には、どの睡眠指標が改善したのかを確認する必要があります。
PSQIとは?睡眠の質を評価する質問票
カモミールの臨床研究でよく使用されるのが、「ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index:PSQI)」です。PSQIは、本人が回答する質問を通じて、睡眠の質や入眠までの時間、睡眠時間、睡眠効率、睡眠の中断、睡眠薬の使用、日中の機能などを評価する指標です。
総合得点は0〜21点で、一般的には得点が高いほど睡眠に関する問題が大きいことを示します。したがって、研究でPSQIの得点が低下した場合、主観的な睡眠状態が改善した可能性を意味します。
ただし、PSQIは質問票に基づく指標です。脳波を測定する睡眠ポリグラフ検査などによって、睡眠の構造や客観的な睡眠時間が改善したことを直接示すものではありません。この違いは、後ほど紹介するメタ分析を理解するうえでも重要です。
2024年のメタ分析|10研究・772人を対象とした評価
2024年、Kazemiらは、ジャーマンカモミールと睡眠の関係を調べた臨床研究について、系統的レビューとメタ分析を発表しました。この研究は、学術誌『Complementary Therapies in Medicine』に掲載されたものです。研究者らは、PubMed、Scopus、Web of Science、Cochrane Libraryを用いて2023年8月までの研究を検索し、条件を満たす10件の臨床研究、計772人を対象に結果を整理しました。
系統的レビューとは、あらかじめ定めた方法で関連研究を収集し、その結果を評価する研究手法です。一方、メタ分析とは、複数の研究から得られた数値を統計的に統合する方法を指します。今回の研究では、すべての評価項目をメタ分析したわけではありません。統計的に結果を統合したのは、PSQIスコアと睡眠時間の2項目です。それ以外の指標については、個別研究の結果を整理する形で評価しています。
1. 主観的な睡眠の質|PSQIスコアに改善
5件の研究データを統合したメタ分析では、カモミールを使用した群でPSQIスコアの有意な低下が認められました。報告された結果は、次のとおりです。
- 加重平均差(WMD):−1.88点
- 95%信頼区間:−3.46〜−0.31点
- 研究間の異質性(I²):88.4%
PSQIは点数が低いほど睡眠状態が良好であることを示すため、この結果は主観的な睡眠の質の改善を示唆しています。ここでいう「−1.88点」は、複数の研究を統合した際の平均的な差です。睡眠時間が1.88時間延びたという意味ではありません。
また、95%信頼区間は統計的な推定の不確実性を表しています。今回の区間は0をまたいでいないため、統計的に有意な差が認められたと判断されています。一方、I²は88.4%と高い値でした。これは、研究間の結果に大きなばらつきがあることを示しています。
したがって、主観的な睡眠の質には改善が認められたものの、すべての人や製剤で同程度の効果が得られると判断することはできません。
2. 寝つき|4研究中3研究で改善
寝つきについては、入眠潜時や、眠りにつきやすさを評価した4件の研究のうち、3件で改善が報告されました。これは、カモミールが眠りにつくまでの過程に影響する可能性を示す結果です。
ただし、この指標についてはメタ分析が行われていません。4件の研究を統合した効果量が示されているわけではなく、個別の研究結果を比較したものです。そのため、「カモミールを飲むと何分早く眠れる」といった一般的な数値を、このレビューから導くことはできません。
3. 夜間の覚醒|3研究中2研究で改善
夜間に目が覚める回数や、眠りを維持できるかについては、3件の研究のうち2件で改善が認められました。2024年のレビューでは、特に夜間の覚醒や睡眠の維持に関する結果が注目されています。
ただし、こちらもメタ分析による統合結果ではありません。個別研究のうち2件で改善が報告されたという意味です。この結果から、カモミールが睡眠の維持に影響する可能性は考えられますが、夜間の覚醒回数が確実に減少すると結論づけるには、さらに研究が必要です。
4. 睡眠時間|明確な改善は確認されず
睡眠時間についてはメタ分析が行われましたが、明確な改善は確認されませんでした。つまり、カモミールによって「よく眠れた」と感じる指標が改善したとしても、実際に眠る時間が長くなるとは限らないということです。これは、睡眠の質と睡眠時間を分けて考える必要があることを示す結果でもあります。
5. 睡眠効率・日中の機能|改善は確認されず
睡眠効率については、3件の研究のうち2件で変化が認められず、1件では悪化が報告されました。また、疲労感などの日中の機能を調べた3件の研究では、いずれも明確な改善が確認されませんでした。睡眠の主観的な評価が改善したとしても、その変化が日中の疲労や活動状態の改善につながるとは限らないことがわかります。
2024年の研究結果を整理すると
| 評価項目 | 研究結果 | 評価方法 |
|---|---|---|
| 主観的な睡眠の質(PSQI) | 統計的に有意な改善 | 5研究のメタ分析 |
| 寝つき | 4研究中3研究で改善 | 個別研究の比較 |
| 夜間の覚醒・睡眠の維持 | 3研究中2研究で改善 | 個別研究の比較 |
| 睡眠時間 | 明確な改善は確認されず | メタ分析 |
| 睡眠効率 | 2研究で変化なし、1研究で悪化 | 個別研究の比較 |
| 日中の機能 | 3研究とも明確な改善なし | 個別研究の比較 |
この結果からは、カモミールが睡眠の主観的な質や一部の睡眠指標に影響する可能性が示されています。一方、睡眠時間や睡眠効率、日中の機能への効果については、十分な裏づけが得られていません。
個別の臨床研究では何がわかっている?
メタ分析の結果をより深く理解するために、代表的な臨床試験も見てみましょう。重要なのは、研究によって対象者や使用したカモミールの形態が異なることです。ハーブティーを飲んだ研究もあれば、濃縮した抽出物をカプセルで摂取した研究もあります。
2011年|慢性不眠症の成人34人を対象とした研究
2011年、Zickらは、慢性の原発性不眠症を持つ成人34人を対象に、カモミール抽出物の効果を調べました。この研究は、参加者をカモミール群とプラセボ群に無作為に分け、参加者と研究者の双方がどちらを使用しているかわからないようにした、二重盲検ランダム化比較試験です。カモミール群には、標準化された抽出物270mgを1日2回、28日間投与しました。
研究では、睡眠時間、睡眠効率、寝つき、入眠後の覚醒時間、主観的な睡眠の質、夜間の覚醒回数などが評価されています。その結果、**主要な睡眠指標について、カモミール群とプラセボ群の間に統計的に有意な差は認められませんでした。**一部の指標ではカモミール群に有利な傾向がありましたが、統計的な有意差を示すものではありませんでした。
この研究は対象者が34人と少ない探索的な試験であり、効果が存在しないことを最終的に証明したものではありません。一方、慢性不眠症に対する有効性を明確に示せなかった研究として重要です。
2016年|産後の女性80人がカモミールティーを飲んだ研究
2016年、ChangとChenは、台湾で睡眠の質が低下している産後の女性80人を対象に、カモミールティーの影響を調べました。参加者は、カモミールティーを2週間飲む群40人と、通常の産後ケアのみを受ける群40人に分けられました。研究では、産後の睡眠の質を評価する質問票に加え、疲労や抑うつ症状なども評価しています。
その結果、介入直後には、カモミールティーを飲んだ群で身体症状に関連した睡眠の問題と抑うつ症状のスコアが有意に低下しました。しかし、4週間後の評価では、両群の間に明確な差は認められませんでした。つまり、介入直後に見られた好ましい変化は、その後の評価では維持されていなかったことになります。
この研究の特徴は、濃縮抽出物ではなく、実際にカモミールティーを飲んでいる点です。一方、比較対象はプラセボのお茶ではなく通常ケアのみだったため、お茶を飲むという行為や、温かい飲み物を楽しむ時間そのものの影響を分離することはできません。また、対象者は産後の女性に限られており、結果をすべての成人に一般化することにも注意が必要です。
2017年|高齢者60人を対象とした研究
2017年、Adib-HajbagheryとMousaviは、イランの高齢者施設に通う60歳以上の60人を対象に、カモミール抽出物の影響を調べました。参加者はカモミール抽出物を使用する群とプラセボ(小麦粉入りカプセル)群に分けられ、カモミール群には抽出物200mgのカプセルを1日2回、28日間投与しました。睡眠の質はPSQIを用いて、介入前、介入途中、介入終了時、終了後に評価されました。
その結果、介入後の睡眠の質はカモミール群で対照群よりも有意に良好でした。これは、カモミール抽出物が高齢者の主観的な睡眠の質に影響する可能性を示す研究です。
ただし、対象者は60人と比較的小規模であり、研究は単盲検で実施されています。また、使用されたのは抽出物のカプセルであり、ハーブティーではありません。2011年の慢性不眠症患者を対象とした研究とは、参加者の年齢や健康状態、研究方法も異なります。両研究の結果が異なるからといって、どちらか一方が誤っていると判断することはできません。
2025年|不眠症の成人90人を対象とした新しい研究
2025年には、カモミールとパッションフラワーを比較した臨床研究も発表されました。Khalidらは、原発性不眠症のある25〜45歳の成人90人を対象に、カモミールの花の粉末を用いたお茶、パッションフラワーのお茶、対照群を比較しました。カモミール群では、花の粉末1gを1日あたり使用し、8週間にわたって介入が行われています。
この研究では、カモミール群で睡眠時間や寝つき、夜間の覚醒、主観的な睡眠の質など、複数の指標に改善が報告されました。一方、この研究は2024年のメタ分析の検索対象期間より後に発表されたため、その統合結果には含まれていません。
また、研究では介入を受けない対照群が設けられていますが、プラセボのお茶による比較ではありません。盲検化の方法についても、効果を厳密に判断するための情報が十分とはいえません。したがって、2025年の結果は新たな可能性を示すものですが、この1件の研究によって不眠症に対するカモミールの治療効果が確立されたと判断することはできません。
2019年と2024年のレビューでは、結論が違う?
カモミールと睡眠に関する情報を調べると、「効果は確認されていない」という説明と、「睡眠の質が改善した」という研究結果の両方が見つかります。この違いを理解するために、2019年の系統的レビューも確認してみましょう。
2019年、Hieuらは、カモミールと不安、全般性不安症、睡眠の質、不眠症に関するランダム化比較試験などを対象に、系統的レビューとメタ分析を行いました。このレビューには、複数の健康状態を対象とした12件の研究が含まれています。
睡眠の質については、統合解析で有意な改善が報告されました。一方、**不眠症そのものを評価したランダム化比較試験は1件しかなく、その試験では不眠症の重症度に有意な改善が認められませんでした。**米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)が「不眠症に対するカモミールの効果については情報が非常に少なく、2019年のレビューで見つかった唯一の不眠症研究では有益な効果が確認されなかった」と説明しているのは、この評価に沿ったものです。
「睡眠の質の改善」と「不眠症の治療」は異なる
ここで重要なのは、研究が評価している対象の違いです。睡眠の質を調べる研究には、睡眠に不満を感じている人や、特定の健康状態にある人など、さまざまな対象者が含まれます。一方、不眠症に対する治療効果を確かめるには、診断基準を満たす患者を対象として、症状がどの程度改善したかを検証する必要があります。
また、睡眠の質を評価する質問票で改善が認められても、不眠症の重症度や客観的な睡眠指標が同じように改善するとは限りません。
つまり、2019年のレビューで「不眠症に対する証拠は不足している」とされたことと、2024年のメタ分析で「主観的な睡眠の質に改善が認められた」ことは、必ずしも矛盾しません。新しい研究が蓄積されてきたことに加え、評価している睡眠の指標や対象者が異なるためです。
カモミールのどんな成分が睡眠に関係する?
カモミールの睡眠への影響を説明する候補成分として、よく取り上げられるのがアピゲニンです。
アピゲニンとGABA受容体の関係
アピゲニンは、カモミールに含まれるフラボノイドの一種です。植物中では、糖が結合した配糖体などの形でも存在しています。基礎研究では、アピゲニンと脳のGABA受容体との相互作用が検討されています。
GABAは、脳の神経活動を調節する神経伝達物質の一つです。その作用に関係するGABA_A受容体は、鎮静や睡眠に関わる神経系の研究でも重要な対象となっています。アピゲニンについては、この受容体のベンゾジアゼピン結合部位との相互作用などが報告されており、カモミールの鎮静作用を説明する候補の一つとされています。
ただし、これは主に基礎研究から提案されている作用機序です。
アピゲニンが含まれるから、眠れるとは限らない
植物成分の作用を考える際には、いくつかの段階を区別する必要があります。まず、試験管内で特定の成分が受容体に作用したとしても、その成分がハーブティーからどの程度抽出されるかは別の問題です。さらに、体内に吸収された後の代謝や、作用部位に到達する量も考慮する必要があります。
研究で使用される濃縮抽出物と、通常のカモミールティーでは、成分量や組成が異なります。そのため、**アピゲニンに神経系への作用が報告されていることと、カモミールティーを飲むことで睡眠が改善することは、同じ意味ではありません。**カモミールの睡眠への作用機序については、今後も研究が必要です。
なぜ研究によって結果が異なるのか?
カモミールの研究では、睡眠の質に改善が認められた試験がある一方、明確な差が確認されなかった試験もあります。こうした違いが生じる理由として、いくつかの研究上の要因が考えられます。
1. ハーブティーと抽出物では条件が違う
2016年の研究ではカモミールティーが使用されましたが、2011年と2017年の研究では抽出物を含むカプセルが使用されています。植物から成分を取り出す方法や、抽出物の濃度、摂取量が異なれば、体内に取り込まれる成分も変わる可能性があります。そのため、抽出物による研究結果を、そのままハーブティーの作用に当てはめることはできません。
2. 研究対象者が異なる
慢性不眠症の成人、産後の女性、高齢者など、研究によって対象となる人々の背景は異なります。睡眠の問題が生じる理由も、生活環境や年齢、健康状態によってさまざまです。一つの集団で観察された結果が、別の集団にも同じように当てはまるとは限りません。
3. 睡眠を評価する方法が異なる
研究によって、PSQIなどの質問票、睡眠日誌、特定の症状に関する評価尺度など、使用する指標が異なります。また、参加者が自分の睡眠を評価する場合と、測定機器によって睡眠を客観的に記録する場合では、得られる情報が異なります。2024年のメタ分析でも、今後は客観的な睡眠指標を用いた研究が必要であると指摘されています。
4. 研究の規模や盲検化にも制約がある
カモミールを飲んでいることを本人が知っている場合、期待や飲用習慣が自己評価に影響する可能性があります。また、参加者数が少ない研究では、偶然によるばらつきの影響を受けやすくなります。
2024年のレビューでは、使用製品の純度や有効成分量の検証、盲検化が成功していたかの確認などが、十分に行われていない研究があることも指摘されています。こうした研究デザイン上の限界を踏まえて、結果を解釈する必要があります。
カモミールティーは寝る前に飲んでもよい?
ここまでの研究を踏まえると、カモミールティーは、睡眠への効果が確立された治療法としてではなく、香りや味わいを楽しむ日常の飲み物として考えるのが適切でしょう。
ジャーマンカモミールの花だけを使用した一般的なハーブティーには、カフェインは基本的に含まれません。そのため、カフェインを控えたい夜の時間にも取り入れやすい飲み物です。また、カモミールにはりんごを思わせる甘い香りがあり、温かいお茶として楽しむこともできます。
ただし、「カモミールの成分によって睡眠が改善すること」と「就寝前に温かい飲み物を楽しむ習慣によって心地よいと感じること」は、科学的には区別する必要があります。特に、研究で睡眠への影響が認められたとしても、通常のハーブティーを何時に、どのくらい飲めばよいかという条件まで確立されているわけではありません。飲む量や時間は、製品の推奨方法や自分の生活リズムに合わせて考えるとよいでしょう。
カモミールティーを飲む際の注意点
カモミールは食品やお茶として広く利用されていますが、すべての人に適しているわけではありません。特に、ブタクサやキクなどのキク科植物にアレルギーがある方は注意が必要です。また、ワルファリンなどの医薬品との相互作用も報告されており、鎮静薬などとの相互作用についても理論的な可能性が指摘されています。
2024年のメタ分析に含まれた研究では有害事象は報告されていませんでしたが、多くの研究では副作用の確認が受動的な方法に限られていました。これは、あらゆる条件で安全性が確立されたことを意味しません。
妊娠・授乳中については、EMAは乾燥したジャーマンカモミールの花を細かくした製剤(ハーブティーとしての使用を含む)の安全性が確立されていると評価しています。一方、それ以外の抽出物などの製剤については、安全性が確立されておらず、使用を推奨していません。なお、NCCIHは妊娠・授乳中のカモミールの安全性について、わかっていることは少ないと説明しています。
体質や服薬状況などに応じて注意し、必要に応じて医師・薬剤師などの専門家に相談してください。
不眠が続く場合は、適切な対処が必要
寝つきが悪い、夜間に何度も目が覚める、十分に眠れず日中の生活に支障が出ているといった状態が続く場合は、ハーブティーだけで対処しようとしないことが大切です。米国睡眠医学会(AASM)の診療ガイドラインでは、成人の慢性不眠症に対して、不眠症の認知行動療法(CBT-I)が強く推奨されています。
カモミールティーは、日常の飲み物として楽しむことはできますが、医学的な治療に代わるものではありません。
よくある質問
Q. カモミールティーを飲むと眠くなりますか?
カモミールに含まれるアピゲニンなどには、神経系との相互作用を調べた基礎研究があります。また、臨床研究では一部の睡眠指標の改善が報告されています。ただし、一般的なカモミールティーを飲むことで必ず眠気が生じると証明されているわけではありません。
Q. カモミールは寝つきをよくしますか?
2024年の系統的レビューでは、寝つきに関係する指標を評価した4研究のうち3研究で改善が報告されました。ただし、この項目はメタ分析で統合されておらず、通常のカモミールティーを飲むことで寝つきが改善すると断定することはできません。
Q. カモミールティーで睡眠時間は長くなりますか?
2024年のメタ分析では、睡眠時間の明確な改善は確認されませんでした。一方、2025年の個別研究では睡眠時間の改善が報告されています。ただし、研究の対象者や方法には違いがあり、一般的な飲用によって睡眠時間が延びると結論づけるには、さらに研究が必要です。
Q. カモミールは夜中に目が覚める回数を減らしますか?
2024年の系統的レビューでは、夜間の覚醒や睡眠の維持を評価した3研究のうち2研究で改善が報告されました。ただし、メタ分析による統合結果ではなく、夜間の覚醒を確実に減らせると証明されたわけではありません。
Q. カモミールは不眠症の治療に使えますか?
2011年の慢性不眠症患者を対象とした試験では、プラセボとの間に有意な改善は認められませんでした。一方、2025年には肯定的な結果を報告した研究もあります。現時点では、不眠症に対する治療効果が十分に確立されたとはいえません。症状が続く場合は、適切な診断と治療を受けることが重要です。
まとめ|カモミールと睡眠の関係はどこまで解明されている?
カモミールは、長年にわたり「眠りのハーブ」として親しまれてきました。その伝統的な利用について、現在はヒトを対象とした臨床研究による検証も進められています。
2024年の系統的レビューとメタ分析では、主観的な睡眠の質に有意な改善が認められました。また、個別研究では寝つきや夜間の覚醒についても、改善を示す結果が報告されています。一方で、睡眠時間や睡眠効率、日中の機能については、明確な改善が確認されませんでした。研究によって対象者や抽出方法、摂取量、評価指標が異なることも、結果を解釈するうえで重要な点です。
さらに、2025年には新しい臨床試験で肯定的な結果が報告されていますが、不眠症の治療効果を確立するには、より質の高い研究が必要です。こうした研究を踏まえると、カモミールは睡眠の一部の指標に影響する可能性があるものの、「飲めば眠れる」「不眠症を改善できる」と断定できる段階にはありません。
カモミールティーの魅力は、科学的に研究される植物成分だけではありません。りんごを思わせる甘い香りや、温かいお茶を味わう時間そのものにも、日常の飲み物としての楽しさがあります。伝統的な知恵を大切にしながら、その可能性と限界を科学的に理解すること。それが、カモミールとの付き合い方をより豊かにしてくれるのではないでしょうか。
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本記事は植物の伝統的な利用と科学的研究についての情報提供を目的としています。カモミールや特定のハーブティー製品の睡眠への効果を保証するものではなく、医療上の診断・治療に代わるものでもありません。

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