ネトルとは?アレルギー・鉄分補給・春の巡りに役立つハーブ解説

見た目はどこかシソに似ていて、緑の葉に細かなギザギザがあるネトル。日本ではあまり馴染みのないハーブかもしれませんが、ヨーロッパでは古くから体調管理や季節の変わり目のケアに使われてきた、植物療法には欠かせない存在です。
実際にはシソとはまったく異なる植物で、ネトルはイラクサ科、シソはシソ科に属しています。ネトルの葉や茎には細かな刺毛があり、触れるとチクッとした刺激を感じるのが特徴です。
そんなネトルは、栄養豊富な野草としても知られ、体の内側から整えたいときに選ばれてきました。
アレルギーや代謝性トラブルと関わる伝統的な使い方
ネトルは、体内の老廃物や尿酸などの代謝産物の排出を促す働きがあるとされ、ヨーロッパの植物療法では血液の巡りを整える目的で重宝されてきました。とくにアトピー性皮膚炎や花粉症、リウマチといったアレルギー性の不調、さらには痛風や前立腺肥大といった代謝性の課題に対しても、ハーブ療法の一環として用いられてきた歴史があります。
その背景には、ネトルの豊富な成分と利尿作用があります。ドイツでは春先にエルダーフラワーやダンディライオンとともにネトルを取り入れる「春季療法」が一般的で、植物の力を借りて体質改善を目指すライフスタイルの一つとされています。
豊富な栄養成分──血とめぐりのサポートに
ネトルには、クエルセチンやルチンなどのフラボノイド類、クロロフィル(葉緑素)、β-カロテン、ビタミンC、カルシウム、カリウム、ケイ素、鉄、葉酸など、実に多様な成分が含まれています。
中でも葉緑素は、赤血球に含まれるヘモグロビンとよく似た構造をもち、伝統的な植物療法の考え方では“血に変わる”とも表現されてきました。もちろん現代の生化学ではそうした変化は確認されていませんが、ネトルが体調を整えるハーブとして長く用いられてきた理由のひとつと言えるでしょう。
また、植物性の鉄は本来吸収されにくいものの、ネトルにはビタミンCやフラボノイドも含まれており、これらが鉄の吸収を高めると考えられています。そのため、貧血が気になる方や妊娠・授乳期の女性にも、穏やかに取り入れられる自然のサポート素材として親しまれています。
ケイ素は骨や爪、皮膚、毛髪などの構造にも関与しており、ネトルは美容や肌のトラブル、瘢痕の修復を目的に用いられることもあります。ローズマリーとブレンドされ、育毛目的で利用される例もあります。
根の活用と公的評価
葉だけでなく、ネトルの根にも注目すべき成分があります。フィトステロールの一種であるβ-シトステロールなどを含み、良性前立腺肥大にともなう排尿トラブルの緩和を目的に使用されることもあります。
実際、ドイツの植物療法における公的評価機関「コミッションE」でも、ネトルはリウマチ、膀胱炎、尿道炎、尿砂(結石の原因)などに対する使用が認められています。
ネトルティーの楽しみ方と風味
乾燥させたネトルの葉は、ティースプーン3~4杯(約4g)を使い、150mLの熱湯で10分ほど蒸らして飲むのが基本のスタイルです。葉緑素を多く含んでいるため、ほんのり青みのある抹茶のような風味が特徴で、和菓子との相性も抜群。クセが少なく、香りの強いハーブともよく調和するため、ダンディライオンやエルダーフラワー、ミントなどとブレンドしても飲みやすく、季節に合わせて味わいのアレンジも楽しめます。
また、日常的に取り入れやすいハーブとして、欧米では妊娠中や授乳期の女性、体調を整えたい方のセルフケアにも親しまれています。適切に利用すれば安心して飲めるとされており、ハーブティーの中でも穏やかで続けやすい存在といえるでしょう。
ネトルを、日々のセルフケアに取り入れるという選択
ネトルは、豊富な栄養成分と古くからの活用実績の両面で注目されてきたハーブです。自分の体調や目的に合わせて、無理なく取り入れることで、植物の力を暮らしの中で実感できるかもしれません。
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