自然の甘さと癒しの力──リコリス(甘草)の魅力に迫る

仕事に追われる毎日。のどの不調や疲れを感じる瞬間、体にやさしく寄り添ってくれるハーブがあるとしたら──それが、リコリス(甘草)です。
砂糖の50倍の甘さ、でもただ甘いだけじゃない
リコリスはマメ科の植物で、その根に含まれるグリチルリチンという成分は、自然の甘さを持つことで知られています。口に含むと、じんわり広がるやわらかな甘みが印象的で、苦味を和らげるため、漢方薬の風味調整にも使われてきました。
この甘さは、ただの味覚的な魅力にとどまりません。古代ギリシアの自然科学者テオフラストスも、リコリスの根を乾いた咳や肺の不調に用いたという記録を残しています。
漢方で最も使われる生薬のひとつ
中国では古くから、のどの違和感や胃の不快感などにリコリスが処方されてきました。漢方の世界では、生薬どうしのバランスを整える“調和剤”としての役割もあり、主要な処方の約7割に甘草が含まれているとされています。
甘さと調和性、その両方が重視されているのです。
研究から見えてきたリコリスのチカラ
近年の研究によれば、リコリスには以下のような作用があると報告されています:
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消炎(炎症を鎮める)
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去痰(たんを出しやすくする)
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粘膜の刺激緩和
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抗ウイルス
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免疫機能をサポートする可能性
これらの多くは、グリチルリチンによるものと考えられています。ただし、個々の体質や体調により感じ方には差があるため、体調に不安がある場合は医師や専門家にご相談ください。
医療・食品の両面で活用されている素材
日本薬局方では、甘草を咳やのどの違和感に対する生薬のひとつとして記載。また、グリチルリチンは肝機能改善を目的とした医療用製剤に含まれているケースもあります。
さらにこの成分は、その甘みを活かしてスナック菓子や佃煮、漬物などの加工食品にも幅広く使用されています。しょうゆ味との相性も良く、味のバランスを整える素材として重宝されています。
使用上の注意点も
『メディカルハーブ安全性ハンドブック(第2版)』では、以下のような注意点も記されています。
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妊娠中は使用を控える
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医療従事者の指導のない長期・多量の使用は避ける
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利尿薬や強心配糖体などとの併用には注意が必要
ハーブは自然の恵みであると同時に、体にしっかり働きかける存在です。自身の体調や目的に合わせて、適切な方法で取り入れていくことが大切です。
小さな甘さが、毎日に整いを
リコリスは、ただ甘いだけの素材ではありません。日々のリズムをやさしく整えるような、バランスのとれたハーブのひとつです。ハーブティーとして取り入れることで、日々のちょっとした切り替えや、リラックスタイムのお供にもぴったりです。
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心地よい時間のきっかけとして、自然の甘さとやさしい風味をお楽しみください。
参考文献
- 木村正典(監修)、林真一郎(編)『メディカルハーブの事典:主要100種の基本データ』東京堂出版、2014年
- 斉藤 和季 (著)『植物はなぜ薬を作るのか』, 文藝春秋, 2017年
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